2017年 3・4月の手紙

暑さ寒さも彼岸まで・・・言葉通り、陽射しはすっかり春めいて来ました。懐かしい香りに振り返ると沈丁花が小さな花をたくさん付けていました。桜の蕾も心なしか膨らんできました・・・もうすぐ美しい季節がやってきます。

六年前の今頃!北国の人達は厳しい冬の寒さがら、やっと解放される日々を待ちわび胸を膨らませていたはず・・・あの日の震災はそんな人々の夢を無惨に砕いていきました。春を待つ心騒ぐ時が、あの年からは辛く哀しい鎮魂の日になってしまいました。未だに、復興は捗らず、たくさんの重い課題が残されたままです・・・

そんな東北から、ひとつのドキュメンタリーが届きました。「音楽に何ができますか?」と題されて、仙台フィルの団員達が震災直後から五年に渡って楽器を片手に被災地を回る日々が記録されていました。最初は衣食住も足りてなく、まして家族の安否さえわからない場所に音楽なんて!と何処かやましさと大きな不安を抱えて避難所に向かった団員達も、音楽を聴きながら止めどなく涙を流す人々の姿に!「被災以来初めて、泣いても良いんだよ!と言われた気がした!」「ひと時、苛酷な現実から忘れられ、久しぶりにゆったり息が吸えた気がする・・・」の言葉に!音楽の力に気がつかされていきます。実は自分達のやっていた音楽には本当に人を癒し、生きる為の心の糧の様なものを与える力があるんだ!大きな手ごたえが彼らを突き動かしていきました。音楽をやっていて良かった!自らも被災を経験して、今、生きて音楽ができることの有難さ、それが人の心を動かせる感動・・・全ては極めて神聖なものの様に思え深く真摯な気持ちで一杯になったそうです。

震災は計り知れない多くのものを奪っていきました。だからこそ、残された私達は、その中から、生きること!命について、それぞれの立場での課せられていることを深く学び、考えなくてはいけない気がしています。季節は春を迎え、たくさんの自然の恵みがもたらされます。この恵みと同じ様に音楽は神様からの素晴らしい恵み・・・改めて身の引き締まる想いを感じています。

友納あけみコンサート第24章「讃*歌」
6月15日(木) 渋谷・さくらホール *開場18:30*開演19:00

今回は二十絃箏奏者の中垣雅葉さんに加わって頂き、竪琴を想わせる様な二十弦箏の幻想的な調べに乗り、歌い、語っていきます。緑の森に溢れる光達・・・一昨年土門拳賞を受賞された下瀬信夫さんの写真でチラシも出来上がりました。リハーサルも始まりました。お馴染の雄太さんのピアノ、寺島貴恵さんのヴァイオリンが箏と絡みあい、音が言葉がキラキラと弾けていきます。ひたすら美しく幻想的な世界で歌をお届け出来ると思います。お出掛けを心よりお待ちしています。

(ホームページ「今月の手紙」より転載)